NPO法人 あそび環境Museum アフタフ・バーバン
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第114号『ささやかなことを面白さに昇華させるエネルギー
=「運動会」をあそびました=
福祉施設での大人(高齢者)のワークショップ』(金子ざん)

都内にある福祉施設(以前にも取り上げました)での月2回の講座『いきいき』講座。受講者は、視覚や聴覚、機能の中途障害を持った50代60代70代の方々です。早いものでもう3年目になります。参加される方もゆっくりと増え、現在は9名。隔週のこの講座を楽しみにしています。
9月の2回は、『秋の運動会』。私は、その2回目に立ち会いました。

まず、プログラムはこんな感じです。

(1) 選手入場 「秋の味覚」で自己紹介
(2) 準備体操 お口の体操 歌『村まつり』
(3) チーム編成、チーム名発表 秋刀魚とマツタケで仲間あつめ
(4) 応援合戦 エールの交換 応援メッセージつくり
(5) 大玉運び 福が廻る
(6) 綱引き 福の神様寄っといで
(休憩)
(7) 騎馬戦 私の秘密
(8) 借り物競争 お話作ろう
(9) フォークダンス『涙そうそう』

左側をながめれば、立派に、運動会ですよね。それが、参加者の手にかかると実に不思議で、愉快なものになりました。矢印の先(右側)に書いてあることばが手がかりです。

2チームに分かれチームの名前を決めます。男女混合の「いがぐり」チームと女性だけの「十五夜」チームになりました。思わず、「色気に食い気ですね(笑)」。

大玉運びは、大中小の白いゴミ袋に風船を詰めたものを2組用意しました。これがそれぞれ、福玉「大吉」「中吉」「小吉」、両チーム1列に並んでの福玉運び、色気で行くはずの「十五夜」チームが猛健闘で、圧勝。悔しがる「いがぐり」チームを尻目に、「これって、恥も外聞もなくなるわね」とは、「十五夜」のリーダーの言。しかも2戦2勝。興奮冷めやらず。ほのかなる汗と聞こえる息遣い。

次いで、ビニールひもを綱に見立てての綱引きです。綱の先に福玉をくくります。「小吉」10点、「中吉」20点、「大吉」30点。引いたものの合計点数で競うというもの。そしてスペシャルとして、各チームから、福の神(人)も出してもらいました。福の神を引いたらなんと、100点。
そうして、始まります。2チームが混じり、銘々に綱を選んでもらい、綱をひとりずつ引いていきます。福の神が当たると、福の神と抱き合い一緒になって「キャー、キャー」の大騒ぎ。次の人は「せめて、大吉でいいから…」と綱の感覚を確かめながら引いています。その軽さに「ああ、小吉だわ(がっかり)」「大丈夫よそれ中吉だから」と励まされ、「まあいっか、中吉なら」と福玉をぎゅっと抱きしめます。そんなやり取りが可笑しくってたまりません。

勝つこと、負けることに執着するのでなく、それぞれのあそびの中で、生の面白さを見つけます。そして、そこに自分のことばや感覚をたくまず、さし挟んでいく、それを即座にだれかが返していく。その会話の妙、やり取りが、実に楽しく愉快で、みんなを和ませてくれます。
また、そんなすき間の会話の中に、「そういえば、あたしよく転んでへっついに頭をぶつけた」 「今年の柿は裏年であんまりならないんだよ」 「昔バナナは高かったんだよ」「そう高級品」 「運動会といえば、村総出の行事だったよね」 年齢(とし)を経たからこそ出てくる実感のある確かな言葉の数々。

騎馬戦は、代表者の秘密を探り、それを当てたら帽子をとったということにするもの。「○○さんが好きな色は何でしょう?」いろんな想像を巡らせて、相手騎馬の気持ちを読みます。「輝いているから赤」「純白の白」「ソラの水色」「なんとなく紫」…「私の好きな色は紫です」「ワーイ」/「△△さんは生まれ変わったら男になりたいでしょうか女になりたいでしょうか?」…「スラーとしているから今のままの女」「弟さんの面倒をよく見ていたから、今度は自分がそういう立場になってみたいということで男」…「そう、男です。その通りの気持ちです。よくわかったね」「当たり前よ」

そして借り物競争、相手チームから「動物」「行って見たい場所」「ため込んでいるもの(?)」を借りてきて(言ってもらって)、そこからお話を作りました。
十五夜チームの借り物は「さる」「沖縄」「気力!」を、いがぐりチームは「キリン」「北海道」「はちみつ」を借りてきました。「ため込んでいるもの」が「気力(!)」と「はちみつ」ということが可笑しいです。そして出来たお話、
十五夜チーム―――さるの兄弟が、船に乗せられて動物園に売られてしまいそうです。しかし兄弟には気力があります。気力を振り絞って、故郷の沖縄へ帰ることにしました。海に飛び込み、必死に泳いで無事沖縄にたどり着きました。
いがぐりチーム――北海道の旭山動物園にキリンがやってきました。キリンは隣にいたシロクマに挨拶代わりにはちみつを渡しました。シロクマは喜んで、こんど何か御礼をと考えました。寒いさむい冬が来ました。キリンは首が冷えて冷えて仕方がありません。それを見たシロクマは、ここぞとばかりにキリンにえりまきを編みました。それは長いながいえりまきでした。よかったね。

これは、いわゆる3つの言葉をもとにお話を作る落語で言う三題噺です。
「ねぇ、さるの兄弟の名前は何にしようか?」「一郎、二郎、三郎・・・は?」(笑)「いいじゃないそれ!わかりやすくて」(大笑)
「キリンって、首がさむそうよね」「じゃあマフラー作ったら」「あっ、それいいね」「でも、かなり長いのが必要だね」(笑)「ねえねぇ、せっかくだから、そのマフラー、タヌキの褌だったって言うのはどう?」「キャー」(大笑)
これが作っている過程での出来事。
本番は、例えばさるの兄弟が泳いでいる場面で、「一郎兄ちゃん、寝ちゃだめだよ」(笑)「はいよ」「二郎兄ちゃんお尻がしずみそうだよ」(笑)「ほらしっかり(と支える)」「ありがとう、三郎に、四郎に、五郎」(大笑)「あっ、沖縄だ」「もうひとがんばり」「(声を揃えて)キキーッ」(拍手)
海を泳ぐというなんでもない場面が、豊かに楽しく演じられることによって、兄弟の様子、海のようす、沖縄への道中が絵となって想像出来ました。
ささやかなことを楽しさに変えそれを表現に昇華して見せてくれました。この面白さ実感は生きる力です。

視点を変えることで、立派に運動会ができました。玉入れ、パン喰い競走、ムカデ競走、リレーと、いろんな種目が生まれそうです。あそび心、イメージする力がエネルギーを生み出す。そんな場に出会いました。

最後は、『涙そうそう』をバックにゆっくりとフォークダンスに挑戦しました。楽しい運動会でした。

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